あれや これや (2001.1)

円周率が3になるということ(2002年からの学習指導要領について少し)

 先日の小6の授業で、円錐の表面積の問題を演習していました。「先生、電卓つかっていい?だって、学校ではいいんだよ。それに、円周率って今は3.14だけれど、そのうち3になるのでしょう?」「そう?でもだめだよ。ちゃんと計算して」「もう」しばらくして、彼らが四苦八苦して計算し、何度も答えが合わないで繰り返しやっているのを十分見届けた後(この意地悪さがだいじなのですよ)で、「はい、みんな黒板見て!」みんな、それぞれの式は正しいんだよ。側面積は6×6×3.14-3×3×3.14 そして底面積は5×5×3.14これをたせばいいよね。つまり、6×6×3.14-3×3×3.14+5×5×3.14だよね。みんな、この計算が合わないんだよね。これは、それぞれ計算しちゃあダメ。よく式を見ると×3.14が全部にくっついているね。だから、×3.14をとってみて、6×6-3×3+5×5を計算してみよう。36-9+25だから52、これに1回だけ3.14をかければ答えだぞ。」 「・・・・・・。」

 「これが工夫だよね。電卓を使うと、そして3.14が3になると、こういう工夫は必要なくなるね。でもこういう一つ一つの知恵を理解し、自分のものにすることで算数とか数学の実力ってついていくと思うんだ。だから、電卓はダメっていたの。」 「・・・・・・。」

 なんとなく私の言いたいことが、子供たちの腑に落ちたような瞬間でした。2002年からの学習要領の大改訂は、こういう積み上げがしにくくなる部分も少なくありません。(台形の面積公式や二次方程式の解の公式などの削除)ある程度潜在的な能力がある子にとってはマイナスの面も多いと思います。

 

推薦入試について(高校入試を例にあげていますが、大学入試も同じことは言えると思います。)

 この時期、初めての受験を迎える中3にとっては、都立の推薦やら私立の単願や併願推薦など、もうほぼ行く高校が決まって喜んでいる子たちもいる中で、それらを横目で見ながら「自分だけ高校いけなかったらどうしよう」と不安に思う気持ちでいっぱいなはずです。自分も、志望する高校のレベルを下げてでも、今、推薦で入れる高校に決めたいと思う気持ちもわかります。しかし、今までの私の経験の中でも、都立の上位高に推薦で入ったのに、高校の授業についていけなくなった子たちが何人もいました。きっと中学時代は優等生だったでしょう。そもそも受験勉強って、高校の勉強をするのに必要な土台づくりと考えることもできるのです。あと2ヶ月間様々な不安を抱えながら、自分と向かい合って、中学校までの勉強を一通り完成させる営みをすることは、このように実質的な面でも、また人間の成長の一過程としても意味があることだと思います。受験って、志望校に受かるためだけのものではなくて、次のステップへの土台づくり、そしてそれを通じて人間として成長していくことが大事なのではないでしょうか。「先生が単願で○○高校なら、今の成績でいけるって。俺、それがいいなあ」と子供が言ったとき、親は、そういう観点で考えてみることも必要だと思います。とにかく推薦で決めても、その後もしっかりと勉強はするべきです。

楽あれば苦あり(?)

 以前は、「エスカレーターで、大学まで楽していけるんだから、今、頑張りなさい」と子供に毎日家庭教師をつけてでも中学受験をさせるお母さまが比較的多くいらっしゃいました。まだ大学神話が健在で、中学入試が一種ブームとなっていた数年前頃の話です。私は、この「楽して」というのがとっても気になるのです。実際そういう風に子供のお尻を叩いて、晴れて(?)入学した場合の多くが、結局「楽できない」のを目の当たりにするからです。また、附属校に入ったのに思いの外、勉強は進学校並みに大変(例えば、早稲田実業も明大中野も日大豊山も附属校と言っても勉強の質・量ともにボリューム満点です)で、(約束が違うと言って、首謀者とされる母親にあたるなど)親子関係を悪くする例もありました。親は子供に楽をさせようとしてはいけないと思います。また、子供を「楽」というニンジンでつったり、「楽」を保証したり、「楽」を取引してはいけないと思います。それは、こどもにこの世で「楽」が一番の価値で、「楽じゃない」ことはバカバカしくてやることじゃないと啓蒙しているようなものだからです。

 また、この「大学付属校」ですが、これもあまり容易に志望するのもどうかと思います。付属校に入った子でも入って高校2年くらいまでは、「将来やりたいことが見つかれば、別に上(の大学)には行かないよ。」とか「今、附属だけれど、自分のやりたい学部がなければ、上(の大学)には行かないよ。」「今、附属だけれど、早慶を受験するつもりだ。」と言っています。でも高校2年生の夏頃になると、自分の内申はこうだから、あとこれをキープしてこれを1上げれば、○○学部には何とか滑り込めそうだ。ところで、○○学部って何するところかな。(話が逆なのがわかりますか?)」と胸算用するのがおおかたです。もちろん付属校に入ったのですからそれでいいでしょう。でも、様々に変化し、成長するのがこの時期です。入学した時の気持ちや考えがずっと同じに継続する場合の方が少ないのではないでしょうか。ある意味守られた(大学進学を約束された)中での選択と0(ゼロ)からの選択とは違うものです。その辺を考えて、あえて付属校、もちろんそういう選択もあると思います。

 

インフルエンザの予防注射のこと

 先日、ある高3の大学受験生から、「先生、インフルエンザの予防接種はしておいた方がいいかなぁ?」と訊かれました。受験が、インフルエンザ流行期のど真ん中にあり、今までにも、中学受験生が試験前日、発熱し、そのまま保健室受験となったりするのを目の当たりにするにつけ、塾としても何らかの統一的なアドバイスをした方がいいのではないかと考えてもみたこともありました。しかし、副作用のこと、ワクチン接種それ自体の効力に対して疑問視する意見もあるということを知っていたため、紙面等で「受験生はできるだけ予防注射はしておいた方がいいでしょう」というような言い方はしてきませんでした。今後も、私自身、専門家でもないために軽率に言うことを避けたいと思いますが、本年の1月1日の新聞(朝日)の一面広告で、民間の製薬会社が、国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦氏に監修を依頼し、インフルエンザについてその特性と治療法について記載してありました。そこには、ワクチン接種の効果や、副作用の心配がほとんどないことが書いてあります。(その他、日常的な予防法やかかってしまった場合の生活や新薬[抗インフルエンザウイルス剤]の登場のことが記載されています。)受験生だけでなく、全般的な健康管理に対する知識の一つとして参考にもなる記事かと思いました。なお、そこには、特にインフルエンザワクチン注射が勧められる方として、[受験や、流行期に重要な仕事の予定がある方]とありました。でも、これが製薬会社の広告であることも考えなければいけないでしょう。そういう訳で、この塾生の質問(?)に対する答えはご家庭の方で考えていただくことにしました。

(MJ通信  雑感  2001.1)

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