植物画 in 蚤の市

 若い頃蚤の市は好きでよく行った。東郷神社の境内で開かれていた定期市に行くことが多かった。いやぁ 胡散臭かったな、昔は。高級そうな古伊万里や備前の花瓶や壺は奥の棚に間隔を開けて並べるが、古びた道具箱のには、古びた茶碗や椀、雑誌、鍵、キセルや文鎮そして何だかわけわからない物たちが埃と一緒に押し込んである。いわゆる我楽多のワゴンセールだ。オッサンども(当時は若かったので笑)は、そこかしこにしゃがんで、メガネをおでこに上げてブツを手にとり、食い入る様にじっと目を凝らす。さて今日は掘り出し物を掘り当てられるか。店主と客の化かし合いが始まる。「その枕は徳川家康が使ってたんだよ。」と。ほんのジョークのジャブを放つ。目利き同士の大勝負、蘊蓄なら負けないといわんばかりの静かなバトルが始まる……。もちろん値段の交渉も。

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 昭和記念公園で開催された東京蚤の市に出かけた。蚤の市は何十年ぶりだろうか。午後からは用事があるので、午前中数時間の限定だった。とにかくお洒落な雰囲気で、昔の骨董市とはだいぶ趣が違う。広場に約250軒ものテントの店が立ち並び、人出も相当なものだ。大道芸も見られる。さあ時間がないので、トントンと一通り見て回り、気になった店をもう一度訪れよう。

 不覚にも、通りがかりの4,5店目で、早くも僕は「罠」に嵌ってしまう。昔の海外のアンティークの書画や写真が入っている箱がいくつか並べている店があった。外国の古い新聞の切り抜きや車や動物や花のイラスト、女優のピンナップの絵やファッション雑誌のページやら。ドイツ、チェコ、イギリス、ロシア、アメリカ、国も雑多。一枚一枚「これなんだろう」と見ていく間に、……完全に時を忘れた……

 急ぎ足で歩を進める。蚤の市で急いで回るほどつまらないことはない。

 ゲートを出る前、北欧専門のアンティークの店で、入場の記念にと思ってこの植物画を買った。800円だった。この手の物はいずれ真っ先に断捨離することになる宿命なので、衝動買いはしないようにと言い聞かせてはいるのだが

 僕が以前から植物画いわゆるボタニカルアートに惹かれるのは、それが科学と芸術両方の詰め合わせだからだと思っている。いわゆるサイエンスアートだ。しかしその配分は絵によってまちまちで、例えば「らんまん」のモデル牧野富太郎自身の植物画いわゆる「牧野式」のように植物の生態を詳細に分析することが主なモチーフのものもあれば、薔薇の絵で有名なルドゥーテのように精緻な写実を芸術的に昇華させた絵もある。いずれにせよ歴史的に見ると、植物画は植物学の発展と植物の知識と普及に大きな役割を果たして来たことは確かである。そしてそれは植物学者と植物画家の出会いによって生まれる化学反応であった。

 今から200年前、ナポレオン王妃ジョセフィーヌはマルメゾンの館の庭を完成するために植物学者のヴァントナやミルベル、そして植物画家のルドゥーテを招き、後に「薔薇図譜」を完成させる。100年前、牧野富太郎博士は最も信頼を寄せる画家山田壽雄と巡り合い、やがて「日本植物図鑑」の刊行に至る。

日本ルドゥーテ協会HPより

日本ルドゥーテ協会HPより

東大植物学と植物画  牧野富太郎と山田壽雄 vol.4

東大植物学と植物画  牧野富太郎と山田壽雄 vol.4

   僕が購入した植物画はスェーデンの植物学者で植物画家のカール・アクセル・マグヌス・リンドマン Lindman )が1902年に刊行した『Nordens Flora』( 北欧の花)の絵を100年前にリトグラフにしたものである。タイワンハチジョウナという邦名の背の高いタンポポ、いわゆるノゲシの仲間だ。画中の1が根、2が地上部分の茎と葉、花、3は種子と科学的な香りがする。一人二役、そしてサイエンスとアートがいい塩梅で混ざってる。

さあ どこにどう飾ろうかな。少しワクワクする。

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