《大学生》というエネルギー体ー卒業生 夜の訪問の巻

仕事が終わり、帰ろうと思うと卒業生が訪ねてくる。どうやら電気がついているのを見上げて足が向くようだ。わりとよくあることだが、終わる時間が夜の11時すぎなので、話し込むと《次の日》になる。彼らはこの光が丘がホームタウンだが、私は「帰る」行為が残っている。 分がわるい(笑)

彼はサッカー強豪高校に入り、3年ではレギュラーになった。部員200名の大所帯だ。夏の予選で破れ、選手権の夢が終わった後、次の目標を必死で考えた。子供の頃から、好きで興味があった《魚》の生態を勉強しようと、そして親元から離れ一人で暮らすべきだと、そして北海道という大自然の中に身をおくことを決める。東京農大オホーツクキャンパスの生物産業学部 海洋水産学科で4年間を過ごした。就活で一時的に光が丘の実家に戻り、翌日北海道にとんぼ返りの強行軍の中、顔見せに立ち寄ってくれた。

彼は今まで自分が考えてきたこと、将来のこと、自分のコトバでユックリと語る。
東京で学生生活を送っていたら‥‥と考える。言葉は多いけど、そしてたくさんの情報が入るけど、中身が薄かったり、誰かの意見の受売りだったりする。
今の彼のコトバはどっしりと心に沈みこむ。

遠く離れた見知らぬ土地の美しい自然の中で、素朴で骨太の一次産業の担い手たちに囲まれて、ゆっくりと自分と向かい合って生きてきたことが推して知れる。
「母からの差し入れが何より嬉しかった。」親のありがたさをしみじみ感じたようだ。「ホタテ漁や畑の手伝いのバイトは時給がすごくいいんですよ」
日本全国の水族館にもボランティアで働いてきた。将来の自分探しだ。裏方に徹するそれらの仕事には敬意を表すれど、様々な人と出会い、コミュニケーションの中で仕事をすることを指向する。東京で、大学の専門とは畑違いの《不動産の仲介業》に決めるようだ。「どんな仕事でも交渉する力は財産だと思います。」「就活をすればするほど大企業より中小企業がオモシロイと思えます。」彼は語る。 「就職してどんな人に会えるか今からわくわくします。そしてそれを経験した自分をどんな次のステップが待ち受けるか楽しみです。」

次の日 私は、彼より一才年下の東大生に会う機会があった。やはり塾の小学部の卒業生だ。就職を含め、将来を考えている。大学の先輩の誰々はGS(ゴールドマンサックス)で新卒で年収○千万貰ってるとか、誰々がベンチャーで成功しているとか、噂が捲き上っているようだ。同じ東大法学部出身のエリート官僚や政治家たちの醜態が晒される。彼は迷う。何が自分にとって最良の選択なのかを。

高校までの蛹の部分が大学という新たな季節に羽化し始める。様々な人やモノとの新しい出会いによって人間が確実に振幅する。4年間の過ごし方が次の人生の《向き》を決める。

20年後‥‥‥
北海道の純朴な彼は、世界的なベンチャー企業を起業しているかも知れない。東大生の彼は、水族館で研究論文を書いているかもしれない。
そんな想像で遊ぶ(不謹慎か 笑)

オモシロイ。教える仕事の妙かも知れない。

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