適者生存ー学校が変わる日

 〈共学化〉〈校名変更〉そして〈新校舎の建設〉、これが私立中高が大変身する三種の神器です。少子化の波の中で私立学校が生き残っていくため、今、最後のチャンスに賭けています。

 学校や教育業界の関係者の脳裏に焼きついて離れない歴史の風景があります。

 

 1996(平成8)、シブジョ(渋谷女子)がシブシブ(渋谷教育学園渋谷)に変身しました。後に教育界の重鎮として活躍する田村哲夫氏がシブマク(渋谷教育学園幕張)の成功経験を携えて、都会型の共学進学校を創ります。進学校といえば男子校、女子校の〈御三家〉が揺るぎなかった時代のことです。大学受験の実績も出ていない数年の間に、それまでの偏差値は一年に5ずつ一足飛びに上がり、すっと60を超えます。新しい変化を求める期待票が集まって、シブシブ旋風が巻き起こりました。

 そして2007年の広尾学園。前身の順心女子学園は、バレーボール部は都内の強豪校でしたが、ほかには特別なアピールポイントが少ない、都心の穏やかな女子高校。生徒を集めるのには、それなりの苦労があったようです。学校が変わる直前は、壊れた窓ガラスを修繕するお金にも事欠く状況だったといいます。

 それが新しい理事長に代わり、学校がそっくり生まれ変わります。〈インターナショナル〉〈医進サイエンス〉などのコースを設定し、ICT教育を牽引していきます。現在は2000人の受験生を集める人気校となりました。

 東横学園、青蘭学院、菊華、宝仙学園、嘉悦女子、戸板女子、武蔵野女子、小野学園女子、日本橋女学館、東京文化、文大杉並(旧名称)、この十数年の間、多くの学校は共学化を契機に校名を変え、新しい学校像を掲げてきました。

 今年は、村田女子が〈広尾学園小石川〉として変身し、募集総人数90名に対して総受験者数3210名を集めています。

 来年も伝統ある女子校の星美学園が共学の〈サレジアン国際学園〉に変わります。千代田女学園、目黒星美も同じように共学となり、新しい校名を冠する予定です。

 教育は時代や社会を映す鏡です。グローバル化やデジタル化が急速に進む中、均質であることに重きをおいた日本の慣習は萎え、多様な個の価値を認める社会通念や価値観が広がります。

 この時流の中、有用な人材のあるべき姿は変わり、国や自治体は学校教育の目標や手段を変えてきたのです。今年は大学入試もセンター試験から共通テストへと移り、学習指導要領も小学校から順次新しく改訂となります。

 

 環境の大きな変化に対応するために、学校は変わります。卒業生はその変化を嘆くかも知れませんが、伝統や理念だけでは学校の経営は成り立ちません。

 

「適者生存」

自然界の進化の過程と同じように見えてきます。

行き着く先には何があるのでしょうか。

2021.04.24更新|学校・進路情報