教育コラム雑感ー都立一貫校 どうしちゃった?

学校休校。
膨大な(?)量のプリント課題を渡し、区立小や中学校のある教師は《私は職務をまっとうしてます》と暗に主張しているようにも見えた。子供たちは、配布されたばかりの真新しい教科書の新出範囲を、自分の力だけでやっておくように指示される。まったくの予習だ。「親が仕事が休みなんだから家で教えてくれるだろう」と楽観する教師もいる。たとえ家にいたとしても、親はリモートでのワークだ。つきっきりで教える余裕はない。勉強が苦手で、親は共働きで、子供に付き添っていられない家庭の子は、とどめを刺されるという感じだ。友達と遊ぶ楽しさも奪われ、一人ではできない課題を前に孤立するだけである。

  できる子は学校のまだるっこい授業に退屈する、その一方で勉強が苦手な子はこんなふうに放置される。公立の「学校」はどこを向いていたのだろう。はからずも「学校」の脆さが露呈する。ふだん見えないものがこの混乱でよく見えてくる。

  都立の中高一貫校は、《未来を切り開くリーダーの養成》を掲げて始まった。都内初の都立中高一貫校に生まれ変わった白鴎中学が始まって15年が経つ。理念はともかく、私立一貫校に占有されていた東京での大学受験実績のシェアを奪取する使命を担う。それは結局、大学受験の実績に収斂される宿命であるともいえる。数字は客観的でわかりやすいから。

  都立F中は、早い時期からclassyなどを使って、宿題の配信や提出を行なっていた。遠隔で学習管理を行う。シラバスや、授業で取り上げる問題も、比較的オリジナリティー富む題材だった。新しい時代の進学校の香りがぷーんとした。課題も多く、成績評価も独特で、合目的に考案された様子がうかがえる。確かに進取の気勢が感じられた。
都立一貫校M中もそうだった。

  でも、いったいどうした。このコロナではまったく見る影もない。

  私立中高は、meetやzoom、そしてyoutubeを使って、リモートの授業を早めに再開した。もちろん私立でも対応の速さやコンテンツの質には差がある。ipadは全員持っているが、形ばかりの学校もある。生徒への配慮を第一に掲げる学校もあれば、無理押しし、そういった視点が欠けている学校もある。しかし、私立の進学校より効率と洗練を感じた都立の一貫校は、まったく機能停止に陥ってしまった。やはりお役所仕事なのか。区立中や他の都立高校と比べて、校長の裁量が大きいはずだ。でも、文科省や都の壁が立ち塞がるのか。公平性を保持しようとして、自身の呪縛で動けなくなってしまったのか。

  リモートが絶対的にいいという話ではない。早いから優れた対応というわけでもない。緊急の際に、何も対応できない学校の体制が不安なのだ。

  コロナで揺さぶられる。新しい教育のかたちは?絶対的なものは何?

2020.06.14更新|MJ通信