教育コラム雑感ースロースタディのすすめ

  都内唯一の男女別学であるKGK中学高等学校。以前塾で、学校見学に行かれたお父さんが「男子女子が同じ敷地にいるのに別学なのは何とも不自然」と言って、子どもの志望校から除外することにしたのを思い出す。しかし、むしろ男女共学の方が、ジェンダー的な性差を助長しやすいという立場もあり、それぞれの特性を活かして指導のアプローチを変えていくことができる別学は欧米でもその意義が注目されている。『男子道&女子力』はKGKのキャッチコピーだ。2008年入試から〈Summit(頂上を目指して)〉〈Straight(まっすぐに)〉というスローガンをかかげ、東大を筆頭とする最難関国公立大学をターゲットにした特進選抜クラスSTクラスをつくった。進学実績をもう一歩極めていこうとする改革である。

  数学、とにかく進度が速い。中2の秋からは、数研の問題集4step数学IAが配布され、容赦無く全問「勝手に」解くことを要求される。確認テストと再テストの縛りが暗黙のプレッシャーになる。一貫校はふつう中3の2学期くらいで本格的に高校過程に移行する。もちろん《体系数学3》等で扱う一部内容は、中学範囲をまたいでいるが、この頃の授業から、新たに高校用の教科書、問題集を扱うことになるのだ。都立高校より1.5年、他の六年一貫校より1年近く早い。そしてこの4stepも、レベルも十分保証されたコンサバな問題集だ。

「勝手に」と書いたのは、学校オリジナルのテキストとこの汎用な学校向けの問題集がリンクしていないということだ。学校でやったことと指定された問題集の問題がずれる。残念だが、カリキュラムや指導の合理性が感じられない。機械的に早く《こなす》ことを訓練する公文式のよう感じられる。公文式は対象によっては評価できるが、じっくり理解する必要がある高等数学には対応できない。

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  一般的に、能力のない指導者は、目標達成の到達度や目標レベルを上げる場合、きまって「量」や「速さ」という問題に収束させる。それは測定可能でわかりやすいからだ。
「今より10倍の量を、3倍のスピードでやります」と宣言し、生徒に鞭を振るう。
   多くの進学校が進学実績を上げるためにしてきた誤謬だ。
脅迫観念に苛まれる生真面目な生徒が猛勉強して、一時的に実績は上がる。

  手もとにサンデー毎日3月号がある。
東大合格者 KGS 現役1名
こんなに早いのにこれだけ?
やっぱり急ぎ過ぎだからじゃないかとも思える。

どういう進学校を目指して、どう名門校にしていくか。いやどうワクワクする学校にするのか。

そして新しい人材育成に向けて 何をするのか……。

期待をこめて。

2020.04.24更新|MJ通信, 未分類