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教育コラム 雑感 ー黒船来航 グローバル化の中での英語教育

  英語を「いつ」学習するのがいいか? これには2つの対立する立場がある。
簡単に整理すると、
A)できるだけ早いうちから外国語を学んだ方がいいという早期教育を推す立場
B) 母国語(日本語)を確実に修得するまでは他の言語を学ぶべきではないという立場
の2つである。
A)では、「0才から英語」を勧める場合もある。赤ちゃんの耳は無垢なので、母国語のように身につけられるということのようだ。また、語学は、数カ国語を一度に学んだ方がいいという意見もある。
B)は、もっと大きくなって、例えば高校生や大学生くらいになってから留学でもすれば効率よく英語力が身につくので、それまではしっかりと母国語である日本語の基盤をつくることに専心すべきであると説く。別にネイティヴである必要はないのだから。
これに対してA)は、例えば社会人になって英語をビジネスで使う場合、相手の微妙なニュアンスを嗅ぎとる感覚は、早い時期から英語でのコミュニケーションに浸ってこそ身につくものだと反論する。
‥‥こんな感じで平行線なのだIMG_1835

2020年の学習指導要領の改定によって、今の小学校5,6生で時間割に組み込まれている「外国語活動」(正式な《教科》ではないので成績はつかない)が「英語」という《教科》に格上げになる。また3、4年ではこの「外国語活動」として、英語を学び(に親しむ)始めることになる。また、現在の指導要領では高校での英語の授業はオールイングリッシュが基本となっているが、改定後には中学校からそうなるのだ。

  もちろんこの改定は、グローバル化、少子化という時代背景の中で、日本の国力を維持、発展させるために、文科省が、学校での人材育成の新しい目標に向けて、大きく舵を切ったのである。英語教育についてはシンガポールや韓国の背中を追いかけることになる。

  社内英語公用語化の流れは、ここ数年で確実に定着している。楽天を始め、ユニクロ、
シャープ、武田薬品に続き、2018年から資生堂、2020年からはホンダも英語を社内公用語を英語とすることが決まっている。企業のグローバリゼーション化の中で必然の到達点なのだ。ただし企業の特性によっては必ずしも英語公用語化を導入しない会社もある。トヨタが然りである。

  このような潮流の中で、ビジネスの世界では英語が公用語、日本語は家庭を中心として文化として継承するという意見が説得力をもつ。 《ビジネスを含めた世界とのコミュニケーションの手段としての英語は、十代で完成するのが望ましい。》と力説する。ウチとソト、ONとOFFを明確に分けるということだ。

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 IMG_1833 ビジネスの世界で英語公用語化の推進する根拠として日本語の特殊性を指摘する。
日本語では、1000字以上の漢字を覚え、一つの漢字の読み方も様々だ。文化や歴史と密接な関係があり、伝達手段としての言語の合理性に欠ける。つまり日本語が情報伝達として非合理的だということだ。外国人労働者などと協働する環境では、英語を使うのが格段と効率的になる。

  しばしば日本語は情緒的な言語で、英語は論理的な言語と言われる。世界の言語の中で稀有な日本語の特殊性を指摘する学者も多い。日本語を通して醸成される情緒こそが日本人のアイデンティティであり、繊細な独特な文化を産む源だとして、英語の早期導入を懸念する声も多い。

  数年前、日本の小学校に通う韓国人の小学校6年生の勉強をトータルに支援したことがある。学校の勉強がわからないという相談がきっかけだった。韓国の家庭で生まれて育ち、小学校1年から3年まで日本の区立中に通い、その後日本の韓国学校に通い、そして5年生でまた日本の学校に通うことになった。授業の中で知識や概念は言葉で伝達される。日本語と韓国語、たとえ同じ教科の同じ概念ではあっても、2種類の言語で伝えられて、たちまち理解不能になったらしい。われわれ人間は、言葉で理解し、言葉で考える。思考が進まなくなってしまったようだ。もちろん一貫したカリキュラムで学ぶことができなかったという時間軸の影響も大きいだろう。つい先程まで私と日本語で話していたが、電話でお母さんと韓国語で話す。はたで見るとそんなバイリンガルが羨ましいが、それはごく日常的なコミュニケーションであり、読んだり、書いたり、考えたりする上では二つの言語が混乱をきたし、知育の習得の進歩を阻害し合っているようにも思える。やはり日常的なコミュニケーションと小学校高学年くらいから学校などで学ぶ「思考する能力」は違うのかも知れない。もちろん、学習が遅滞する要因は、言葉の問題だけでなく、その子の能力や生活 のスタイルやリズム、生まれ育った環境など様々な要因を含めて考える必要はある。

  この光が丘地域も、最近、韓国や中国出身の子どもたちも目立つようになった。お国の言葉に加え、日本語、そして英語と、トリリンガルの能力はこれからのビジネス環境の中で、とても有利な技能と思う。しかし、母国語すなわちどの言語で様々な概念を学び、思考し、表現するかを決めて、それによって深く考えることができる能力を磨くことを知育の中心に据えないと、「頭が混乱する」ことになってしまう。

  真にインターナショナルということは、どれだけ日本人としての芯があるかということだ。
やはり言葉は道具に過ぎない。もちろん必要な道具だ。

 

2018.01.26更新|MJ通信